多くの損害保険会社は、個人賠償特約を自動車保険や火災保険などに特約として付けることができます。
個人賠償特約とは
まず最初に、自動車保険に付けることができる個人賠償特約は、保険会社により呼称が異なり、個人賠償責任特約、個人賠償責任補償特約、個人賠償責任危険補償特約、日常生活賠償責任保険特約などと表記されますが、基本的に同じ特約です。
個人賠償特約=個人賠償責任特約=個人賠償責任補償特約=個人賠償責任危険補償特約=日常生活賠償責任保険特約
日本国内で発生した自動車(原動機付き自転車、自動二輪車を含む)に起因する事故以外の日常生活の偶然な事故によって、契約者または家族(別居の未婚の子を含む)が他人にケガをさせたり、他人の財物に損害を与えたりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われます。
家族が自転車で人にぶつかってケガをさせた | ○ |
自転車で転び、駐車中の他人の自動車を傷つけてしまった | ○ |
飼い犬が人をかんでケガをさせた | ○ |
デパートで子供と買い物中に、お店で陳列してある商品を壊してしまった | ○ |
子供が誤って、他人の家の窓ガラスを割ってしまった | ○ |
借りた物や預かった物を破損や紛失し持ち主に対する賠償損害 ※1 | △ |
子どもが蹴ったボールが同居の祖母にあたり、骨折させてしまった ※2 | × |
マンションで洗濯機から水が溢れ、下の階の戸室に被害を与えてしまった | ○ |
ベランダから物が落ちて通行人にケガをさせてしまった | ○ |
ゴルフプレー中に自分が打ったボールが他人にあたり、ケガをさせてしまった | ○ |
サッカーのプレー中に相手選手にぶつかってケガをさせてしまった場合 ※3 | △ |
契約者や被保険者などの故意による事故 | × |
地震・噴火・津波を原因とする場合 | × |
※1:借りた物や預かった物に対して生じた賠償損害は、基本的に支払いの対象外となり、受託物賠償責任保険で補償することになります。ただし、東京海上日動火災保険、損保ジャパン、三井住友海上火災保険は、個人賠償特約に受託物の賠償損害補償も含む保険商品に再設計し補償範囲を拡大しています。
※2:同居の親族間における損害は、補償の対象になりません。
※3:スポーツ中の事故については、通常のプレー内で想定される行動の範囲内である場合(サッカーのプレー中に相手選手にぶつかってケガをさせてしまった場合など)は、法律上の損害賠償責任が発生しないため、支払いの対象外となることがあります。
◆自動車保険における『家族』の定義とは?
主に運転される方の『家族』の範囲は、以下のとおりです。
・「主に運転される方」の配偶者
・「主に運転される方またはその配偶者」と同居している親族
・「主に運転される方またはその配偶者」と別居している未婚の子
※配偶者が別居している場合、その配偶者と同居している親族を含みます。
個人賠償特約に加入するにあたって、重複に注意しましょう。
個人賠償特約は、記名被保険者の家族内でいずれか1つの自動車保険に付ければ必要な範囲が補償されます。
記名被保険者(主に運転する人)の家族(記名被保険者の配偶者、記名被保険者またはその配偶者の同居の親族、別居の未婚の子)内で自動車を複数所有し、自動車保険も複数契約する場合、補償範囲が重複することがあるので注意しましょう。
条例の「自転車保険の加入義務化」への対策になる個人賠償特約
最近、自転車事故の加害者に高額な賠償請求を命じる事例が増えています。そのため、各自治体で「自転車保険」の加入を義務付ける動きが広がっています。
多くの自治体では、「自転車の加害事故を起こした場合に被害者への賠償責任を補償する保険」に加入するように定めています。
「自転車保険の義務化」=「自転車保険」と思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
自動車保険に個人賠償特約を付けることでも、条例の「自転車保険の加入義務化」への対策になります。
自動車保険に個人賠償特約を付ければ、自転車事故で賠償責任を負ってしまった際にも備えられるので、自転車保険の加入義務を満たせます。
自転車事故で負った自身のケガの補償は個人賠償特約ではカバーできません。又、自治体によって条例は異なるので、居住地域の条例を確認のうえ、必要に応じて自転車保険の加入も検討しましょう。
【個人賠償特約】と【自治体の「自転車保険」加入義務が求める補償】範囲
ー | 個人賠償特約 | 自治体の「自転車保険」加入義務が求める補償 |
---|---|---|
人の補償(相手) 例:自転車で衝突し他人にケガをさせた場合 |
○ | ○(被害者への賠償責任を補償) |
人の補償(自分) 例:自転車で衝突し自分がケガをした場合 |
× | × |
物の補償(相手) 例:自転車で接触し他人の車に傷をつけた場合 |
○ | × |
物の補償(自分) 例:自分の自転車がパンクした場合 |
× | × |
各保険会社の個人賠償特約名と保険金上限を比較
では、実際に日常生活の事故により賠償責任を負った場合、どれくらい支払われるのでしょうか。
保険会社によって、支払い保険金上限は1事故につき1億円から無制限と幅があり、それに伴い、保険料も約1,300円/年から2,700円/年と幅があります。
各社ともに示談交渉サービス(国内のみ)が付いています。
保険会社名 | 個人賠償特約名 | 保険金上限(1事故につき) |
---|---|---|
ソニー損保 | 個人賠償特約 | 国内のみ3億円まで |
SBI損保 | 個人賠償責任危険補償特約 | 国内のみ1億円まで |
おとなの自動車保険 | 個人賠償責任特約 | 国内のみ無制限 |
三井ダイレクト損保 | なし | なし |
イーデザイン損保 | 個人賠償特約 | 国内のみ1億円まで |
アクサダイレクト | 日常生活賠償責任保険特約 | 国内のみ3000万円まで |
チューリッヒ保険 | 個人賠償責任補償特約 | 国内のみ1億円まで |
東京海上日動火災保険 | 個人賠償責任補償特約 | 国内無制限、国外1億円まで |
損保ジャパン | 個人賠償責任特約 | 国内無制限、国外1億円まで |
三井住友海上火災保険 | 日常生活賠償特約 | 国内無制限、国外3億円まで |
(2021年4月現在)
補償内容の詳細等は各保険会社の約款や重要事項説明書等で確認しましょう。
まとめ
- 個人賠償特約は、保険会社によって呼称が異なるが、基本的に同じ特約である。
- 個人賠償特約は、契約者または家族(別居の未婚の子を含む)が他人にケガをさせたり、他人の財物に損害を与えたりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる。
- 個人賠償特約に加入するにあたって、重複に注意すること。
- 個人賠償特約は、条例の「自転車保険の加入義務化」への対策になる。
- 個人賠償特約は、保険会社により支払い保険金上限が1事故につき1億円から無制限と幅があり、それに伴い、保険料も約1,300円/年から2,700円/年と幅がある。
個人賠償特約について、以下の記事も参考にしてください。
参考記事 個人賠償特約についてよくある質問と回答(FAQ)
当サイト内のコンテンツ『自動車保険の見積相場比較記事早見表』から、あなたの状況と近い記事を読むと、自動車保険の相場や選び方のコツなど参考になると思います。